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季節の記憶の厚み

秋の光が樹木を穏やかに彩る風景にはその美しさに陶然とさせられながらも同時にその美しさが過ぎ去っていくことへの惜しさが感じられてどうにも切なくなる。こんな思いの背景にはこれまでに経験してきた秋の思い出の堆積があるのだろう。といっても日付をもった記憶がいま見ている光景にはっきりとオーバーラップするということではないのだがかつて感じた情動が同時に複数響いているようには感じられる。記憶の役割は次の行動に有...

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季節の記憶の厚み

秋の光が樹木を穏やかに彩る風景にはその美しさに陶然とさせられながらも同時にその美しさが過ぎ去っていくことへの惜しさが感じられてどうにも切なくなる。こんな思いの背景にはこれまでに経験してきた秋の思い出の堆積があるのだろう。といっても日付をもった記憶がいま見ている光景にはっきりとオーバーラップするということではないのだがかつて感じた情動が同時に複数響いているようには感じられる。記憶の役割は次の行動に有...

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死を鏡と見るかガラスと見るか

死の捉え方を比喩的に分類すると大きく2つに分けられるようだ。一つは死を鏡とし、もう一つはガラスとする。鏡とする捉え方は死に関するどんな思考も鏡に反射して自分を映すことになり鏡の向こうは把握できない。この捉え方によれば生きている者が死についてなにを思ってもその内容は生の断片でしかなく死そのものはまったく表わさない。死は不可知であるとする。この結論にいたると死についての積極的な思考はやむことになるが未...

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死を鏡と見るかガラスと見るか

死の捉え方を比喩的に分類すると大きく2つに分けられるようだ。一つは死を鏡とし、もう一つはガラスとする。鏡とする捉え方は死に関するどんな思考も鏡に反射して自分を映すことになり鏡の向こうは把握できない。この捉え方によれば生きている者が死についてなにを思ってもその内容は生の断片でしかなく死そのものはまったく表わさない。死は不可知であるとする。この結論にいたると死についての積極的な思考はやむことになるが未...

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生は無意味か?

がんの告知を受けた1年ほど前死について真剣に考えたいと思いジャンケレビッチの「死とはなにか」を読んだ。ジャンケレビッチには「死」という本もあるがそちらはあまりにも厚くて当時、読む気になれなかった。当時の読書は気がせいていたから知りたいことだけを吸収した。ジャンケレビッチは死を思考不能としている。生きている者は事実上死を経験することができない。だから死について何かを考えようとしても考えの内容は生の経...

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生は無意味か?

がんの告知を受けた1年ほど前死について真剣に考えたいと思いジャンケレビッチの「死とはなにか」を読んだ。ジャンケレビッチには「死」という本もあるがそちらはあまりにも厚くて当時、読む気になれなかった。当時の読書は気がせいていたから知りたいことだけを吸収した。ジャンケレビッチは死を思考不能としている。生きている者は事実上死を経験することができない。だから死について何かを考えようとしても考えの内容は生の経...

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早朝、2階のベランダで洗濯物を干していると木々の緑の様子が昨日とは違った。昨日までは日盛りを過ぎた時間帯の家の影や道端に置かれた鉢植えの植物の下にまだためらうような秋の気配がかすかに漂っていただけだったが今朝は周囲の家屋や視線が届く限りの光景すべてを秋の大気が覆っていた。夏はものがむき出しになってそこに光が張り付いているようだったが秋の光は背後に微妙な暗さをもっていて樹木でも家の屋根でも窓でももの...

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早朝、2階のベランダで洗濯物を干していると木々の緑の様子が昨日とは違った。昨日までは日盛りを過ぎた時間帯の家の影や道端に置かれた鉢植えの植物の下にまだためらうような秋の気配がかすかに漂っていただけだったが今朝は周囲の家屋や視線が届く限りの光景すべてを秋の大気が覆っていた。夏はものがむき出しになってそこに光が張り付いているようだったが秋の光は背後に微妙な暗さをもっていて樹木でも家の屋根でも窓でももの...

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真実・愛・幸福 3

現在の関心に規制されているので思い出せるのは関心に対応することだけだしそうは思えないかもしれないけれど過去はすっかり保存されている。記憶は現在の生々しさを浄化して過去を一種の美しさで覆う。偶然のきっかけである過去の体験が現在に再生されると過去が歓びに満たされていることを実感できる。ただし、本心にそわない行為は過去では悔いとなって率直にその非を認めないといつまでも棘として残る。これだけのことが分かっ...

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真実・愛・幸福 3

現在の関心に規制されているので思い出せるのは関心に対応することだけだしそうは思えないかもしれないけれど過去はすっかり保存されている。記憶は現在の生々しさを浄化して過去を一種の美しさで覆う。偶然のきっかけである過去の体験が現在に再生されると過去が歓びに満たされていることを実感できる。ただし、本心にそわない行為は過去では悔いとなって率直にその非を認めないといつまでも棘として残る。これだけのことが分かっ...

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真実・愛・幸福 2

それはどのように機能しているのか。その機能はどういう役に立つのか。こんな問いをいつも知らず知らずのうちに出会ったものや人に向けてきたのだと思う。あの人はこのプロジェクトでどんな機能を果たせるのだろう。この製品は自分の生活にどんな機能を提供してくれるのだろう。自分ならこの組織でこのように機能できそのことがこういう役に立ちその評価としてこんな年収を得るこんなことが自分の支えになっていたのだと思う。しか...

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真実・愛・幸福 2

それはどのように機能しているのか。その機能はどういう役に立つのか。こんな問いをいつも知らず知らずのうちに出会ったものや人に向けてきたのだと思う。あの人はこのプロジェクトでどんな機能を果たせるのだろう。この製品は自分の生活にどんな機能を提供してくれるのだろう。自分ならこの組織でこのように機能できそのことがこういう役に立ちその評価としてこんな年収を得るこんなことが自分の支えになっていたのだと思う。しか...

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真実・愛・幸福

幸福は結果的に得られるもので自分から得ようとするものではない。愛は自然に湧きあがってくれればいいもので自分から起こそうとするものではない。自分から求めるものは真実のみ。なぜ、こう思ってきたのか振り返ることはなかったががんであると告げられ残り時間を意識するようになってからは優先順位づけに変化が起きた。幸福は健康にいい。ステージⅣのがんにとっても幸福であることは治療にとってプラスだろう。愛は無理に起こ...

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真実・愛・幸福

幸福は結果的に得られるもので自分から得ようとするものではない。愛は自然に湧きあがってくれればいいもので自分から起こそうとするものではない。自分から求めるものは真実のみ。なぜ、こう思ってきたのか振り返ることはなかったががんであると告げられ残り時間を意識するようになってからは優先順位づけに変化が起きた。幸福は健康にいい。ステージⅣのがんにとっても幸福であることは治療にとってプラスだろう。愛は無理に起こ...

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記憶・永遠 8

過去をありありと思いだすときそれが過去であることを知りながら現在であるかのごとくに体験が推移していく。現在における過去のまったき再生。そんな体験を何度かしたあとプルーストはそれらの正体がなんであったのか分析する。「時間の秩序から解放された瞬間が、それを感じるために、時間の秩序から解放された人間を私たちのうちにふたたび作り出した」過去・現在・未来という日常の社会生活に欠かせない意識の時間モードからあ...

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記憶・永遠 8

過去をありありと思いだすときそれが過去であることを知りながら現在であるかのごとくに体験が推移していく。現在における過去のまったき再生。そんな体験を何度かしたあとプルーストはそれらの正体がなんであったのか分析する。「時間の秩序から解放された瞬間が、それを感じるために、時間の秩序から解放された人間を私たちのうちにふたたび作り出した」過去・現在・未来という日常の社会生活に欠かせない意識の時間モードからあ...

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記憶・永遠 7

自分が望む未来の実現に向けてプランを立てたり過去のことをいろいろ思い出したりいまの必要にせまられて衣食住に配慮したりと時制に対応する意識は未来モード、現在モード、過去モードに分けられる。これらのモードはどれも心の働きの一部を使っているだけでそれに比べるとマドレーヌの味覚が幼年期の自分の体験を丸ごと再現させるといった過去の記憶の現在におけるまったき再生という体験は3つのモードを総合したもので時間経験...

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記憶・永遠 7

自分が望む未来の実現に向けてプランを立てたり過去のことをいろいろ思い出したりいまの必要にせまられて衣食住に配慮したりと時制に対応する意識は未来モード、現在モード、過去モードに分けられる。これらのモードはどれも心の働きの一部を使っているだけでそれに比べるとマドレーヌの味覚が幼年期の自分の体験を丸ごと再現させるといった過去の記憶の現在におけるまったき再生という体験は3つのモードを総合したもので時間経験...

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記憶・永遠 6

未来に向けて有用な行動を起こそうとするとその行動を助ける記憶だけがよみがえる。行動に対するためらいがあるときはそのためらいの度合いに応じてさまざまな記憶がよみがえる。行動を起こす気がないなら曖昧な欲求に応じてやはりさまざまな記憶がよみがえる。生命への執着が消えていると記憶の再生に対する指示がなくなるのでどんな記憶でもよみがえることになる。溺死しそうになった人がもう一歩で死だと思われたときその人の全...

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記憶・永遠 6

未来に向けて有用な行動を起こそうとするとその行動を助ける記憶だけがよみがえる。行動に対するためらいがあるときはそのためらいの度合いに応じてさまざまな記憶がよみがえる。行動を起こす気がないなら曖昧な欲求に応じてやはりさまざまな記憶がよみがえる。生命への執着が消えていると記憶の再生に対する指示がなくなるのでどんな記憶でもよみがえることになる。溺死しそうになった人がもう一歩で死だと思われたときその人の全...

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記憶・永遠 5

...

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記憶・永遠 5

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記憶・永遠 4

充実しているときには充実している意味を問わない充実には問いを入れる余地がないから。空虚なときは空虚さの理由を問う空虚にはいくらでも問いが入るから。空虚なときに生の意味を問うなら空虚さに応じた記憶しかよみがえらないからそのとき想起された生の軌跡は貧弱なものになる。「私は人生が、そのいくつかの瞬間においてはあんなに美しく見えるのに、結局はつまらないものと判断されるわけも分かっていた。それは私たちが人生...

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記憶・永遠 4

充実しているときには充実している意味を問わない充実には問いを入れる余地がないから。空虚なときは空虚さの理由を問う空虚にはいくらでも問いが入るから。空虚なときに生の意味を問うなら空虚さに応じた記憶しかよみがえらないからそのとき想起された生の軌跡は貧弱なものになる。「私は人生が、そのいくつかの瞬間においてはあんなに美しく見えるのに、結局はつまらないものと判断されるわけも分かっていた。それは私たちが人生...

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記憶・永遠 3

誕生からいまにいたるまで眠りであったり覚醒であったり意識であったり無意識であったりはしてもつねにいまここでずっと鳴りつづけている音が自分だとするなら自分はひとりいるだけになる。自分がひとりだというのは実感としても自然だがこの点に関してプルーストの自我観は変わっている。『私が図書室で「フランソワ・ル・シャンピ」を手にとると、ただちに私のなかには一人の少年が立ち上がって、私にとってかわる。この少年のみ...

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