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プルースト 死の恐怖を乗りこえる3

italie20110910 137

プルーストは紅茶にひたしたマドレーヌの味や
皿に当たるスプーンの音など
現在と過去に共通する感覚によって
過去がそのままに再現されることを体験する。

「かつて聞いた音や、かつて呼吸したにおいが、同時に現在と過去のなかで、現実的ではあるが現在のものではなく、観念的ではあるが抽象的ではないものとして、ふたたび聞かれたり呼吸されたりすると、たちまちふだんは隠れていた事物の恒久的な本質が解き放たれ、私たちの真の自我、ずっと前から死んでいたように見えたこともあったが、しかし完全に死んでいたわけではないこの自我、それが今や目ざめ、天からもたらされた糧を受けて生き生きと活気づく」

現在における過去の再現とは
現在の性格と過去の性格を併せ持ったものだが
それぞれの不完全さを脱していて
至福の印象に満たされている。

ただし、この至福は観念的なだけでなく
肉体がもつ感覚をも備えていて
プルーストはこんなふうに表現している。

「(現在と過去の)両者に共通の感覚はそのまわりに昔の場所を再現しようとつとめていたのであるが、それにかわる現在の場所はその総体をあげてこれに抵抗し、ノルマンディの海岸や汽車の線路脇の土手などが、パリにある館に移動してくることに反対するのであった。」

プルーストはいま、パリの「ある館(ゲルマント邸)」にいて
「ノルマンディの海岸(バルベック)」での体験が
再現されるのを味わっている。

「バルベックの海に面した食堂は、さしこんでくる夕陽を受けるために祭壇布ふうにととのえられたその綾織りクロスごと、堅牢なゲルマント邸を揺るがせてそのドアを押し破ろうとつとめ、私のまわりにあるソファを一瞬のあいだぐらつかせた。」

海岸にあった食堂が
パリの館のドアを「押し破ろうと」する。
過去が現在に侵入してきて
ソファがぐらつく。

これはプルーストの体験だが
現象として見るなら
物理的な事実としては受け入れがたいだろう。

だから、これは想像の世界の出来事であって
空想にすぎない、と常識的には思える。

しかし、プルーストの体験としてはリアルであって
このリアリティこそが死の恐怖を消すことになる。

※引用は「失われた時を求めて 見出された時」鈴木道彦訳より
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