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「トリコロール 赤の愛」3

IMG_0822.jpg

[オーギュストの変容]
司法試験に合格したオーギュストは
彼女が他の男と寝ている光景を目撃する。
この体験は彼に
表面には現れ難い人の本性といったものを
絶えず疑う傾向を植え付ける。

社会的に問題が生じた案件が
裁判に持ち込まれることから
判事は人のダークサイドを見ざるを得ないし
正義の視点から真相を究明する必要があるため
人の本性を冷徹に見極める傾向は強まる。

こういう背景を抱えたオーギュストは
愛していたが自分を裏切った彼女を事故で失う。
これは作品中、フェリー事故と同時に
ヨットの事故も起きており
やはり犠牲者が出ているという報道から推測できること。

この時点では、オーギュストに愛を信じることはできない。
オーギュストは自分の能力を活かせる接点でのみ
社会との関係を形成していこうとするだろう。
その能力とは、裁いて罰するというもの。

なによりも、自分の職能に徹しよう
オーギュストはこう覚悟を決めようとする。
ジョゼフはそうした。
しかし、オーギュストはフェリー事故から救出されることで
バランティ-ヌと出会う。

[バランティーヌを誘惑するジョゼフ]
職能に徹してきたジョゼフは
すでに人生の総括期を迎えている。
自分の一生がなしたことは何だったのか。

正しさを基準にして
裁き
罰する
これが自分の仕事であり
そのために自分は人間観・世界観を
冷徹な観察によって築いてきた。

しかし、ジョゼフは愛による
悔い改めと赦しも
知的レベルの理解では把握している。

バランティーヌが轢いた後に癒した犬は
教会を経由して飼い主であるジョゼフのもとに走るが
これはジョゼフが犬を連れて教会に行っていたことを表す。
つまり、ジョゼフは愛を信じたい気持ちももっていた。

ジョゼフは愛した女の裏切りがトラウマになり
愛に封印をしてしまった。
その封印を解くことは
教会に行くことではできなかった。

しかし、バランティーヌの無垢さに触れたとき
封印を解くチャンスを感じる。

そこで、ジョゼフは彼女の反応を冷徹に計算して
巧妙に彼女の行動を誘導することで
自分の再生のチャンスを試すことになる。

ジョゼフの誘導:前半
① 犬の治療費を多すぎるほど送って彼女が返却に来るようにする。
② 同性の愛人をもつ夫の件をその妻に伝えないのかと彼女を挑発する
③ 娘に嘘をついて過剰なサポートを要求する母親のケースを教えてバランティーヌに自分の家族でも同様のことが起きていると気づかせる

ここまでの誘導はジョゼフが
自分の信念をバランティーヌに開陳しているもので
いわば、これまでの自分の人生を示し
そんな自分をバランティーヌがどう裁くのか
見守っている。

このジョゼフの挑戦に対して
バランティーヌは正義の観点では
経験に裏付けられたジョゼフに反論できないが
ジョゼフという人間に対する包括的な感想を述べる。

「哀れな人」

バランティーヌはジョゼフを裁こうとはせず
哀れんだ。
この哀れみでジョゼフは覚醒する。

覚醒後もジョゼフの誘導は続くが
その意味は変わっている。
覚醒前は、自分の人生の総括に
バランティーヌを利用しようと思っていた。
覚醒後は、バランティーヌとの関係を深め
自分の人生を新しい視点から照らしなおすことで
過去の意味を変えようとする。

ジョゼフの誘導:後半
④ バランティーヌの反応を見越して盗聴の密告を自分で行う
⑤ バランティーヌの何らかの反応を期待してかつて愛を封印したいきさつをほのめかす

ジョゼフのこれら一連の行動は
絶望的にしか総括できない自分の人生を
なんとか肯定的に意味づけたいという意図から来ていて
ジョゼフは最後のチャンスをバランティーヌに見た。

このチャンスを最終的にはどう生かすのか。
ここにこの作品のもっとも美しいが
感性の合わない人には馬鹿げた創造がこめられる。

ジョゼフの人生の新しい意味をになうのは
オーギュストなのだ。

ジョゼフはバランティ-ヌの夢を観たと語る
バランティーヌが50代で幸福そうだったと。
バランティーヌは50代の自分のパートナーが誰だかを知りたがる。
ジョゼフの答えは両義的だ。
まず、イメージとしては見えなかったという。
つまり、夢を観ている自分だといっている。
しかし、バランティーヌが20代かと問うと
そうだと肯定する。
これはオーギュストだといっている。

過去が過去として取り返しがつかなければ
過去を贖うことはできない。
事実は確定していて
動かしようはない。
これは裁く論理。

しかし、過去は現在との関係で
その意味を変えられる
これは愛の流儀。

裁く論理から愛の流儀に移行するために
ジョゼフはバランティーヌに
自分の過去にさかのぼってもらい
オーギュストと出会うことで
彼が抱えつつあるトラウマを解消してもらう。
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