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プルースト よみがえる体験

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ある過去の体験が記憶によって
そっくりそのまま再生するという
特異といってもいい事実をとおして
プルーストは時間についての認識を深めている。

「失われた時を求めて」のなかに
この過去の再生がいくつか出てくるが
有名なのはマドレーヌの話で
お茶に浸したマドレーヌを食べたら
それを習慣にしていた過去の自分と
その自分が生きていた町とが
記憶によってそっくりよみがえったという。

プルーストにとって
切実な意味をもつ過去の再生は
この「マドレーヌ」より
死んだ祖母についての体験だろう。

作中の語り手は
祖母に溺愛されていた。

バルベックという海辺の保養地に
祖母といっしょに行ったことがあり
繊細な彼はそのとき
ホテルの部屋に慣れることができず
非常な苦痛を感じていた。

祖母はそんな彼に
献身的に仕えていた。

2度目のバルベック行きは
祖母が死んで1年以上たったときのことだった。

到着した日の夜
彼は前回と同じ部屋でブーツを脱ごうと身を屈める。
するとその動作が以前と同じだったことから
前回、彼に手を貸してくれていた祖母が
そのときと同じ位置で
やはり同じ動作をするのを語り手は感じる。

「あたかも時間のなかには異なった系列が併行して存在しているかのように―なんの切れ目もなしにかつての到着第一夜のあとにすぐつづいて、祖母が私の方へと身を屈めた瞬間にぴたりと一致した」

前回と同じ部屋で同じ動作を行ったら
前回いた祖母が同じ動作をしてくれる。
この、ありありとした臨在感をもたらす記憶の働きによって
語り手はすでに死んでいる祖母に関して
新たに痛切な体験をすることになる。

※引用は「失われた時を求めて 第四篇 ソドムとゴモラⅠ」鈴木道彦訳より
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