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プルースト 失うことでしか見いだせない愛

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バルベックを2度目に訪問して
祖母を思い出した語り手は
その瞬間を次のように表現している。

「私の胸はある未知の神々しい存在に満たされてふくれあがり、嗚咽が身体を揺り動かし、涙がはらはらと目からあふれ出た。」

思い出した瞬間
祖母はまず祖母として認められているわけではなく
「未知の神々しい存在」として感じとられている。

ただ「未知」とはいえ
「私」にとってその存在が
決定的に尊いものであることは本能が分かっていて
嗚咽が引き起こされ
涙が出る。

そして、「はじめて祖母のことを、生き生きとした、本物の、張りさけんばかりに私の心をいっぱいにする人と感じ」る。

祖母の生前
「私」は祖母が自分を愛していることを
よく知っていた。

「その愛にとっては、すべてが私によって成り立ち、私を目標とし、たえず私に向かっていたから、どんな偉人たちの才能も、開闢このかた存在したありとあらゆる天才も、祖母にとっては私の欠点の一つにも値しないと思われたことだろう。」

ほとんど盲目的な無償の愛を
「私」は祖母から受けていたが
その関係において「私」は祖母に甘えきり
頼れるときは頼りながらも
無関心なときは距離をとったり
わざと傷つけたりするようなことまでしていた。

ホテルの部屋で祖母の臨在を感じた「私」は
祖母から受けた愛情に満たされて幸福を感じるのだが
「その幸福感を現在のものとしてふたたび体験したそのとたんに、まるで肉体的苦痛のぶりかえしのように、祖母はこの世にいないのだという虚しさの実感が湧きあがって、それが幸福感を貫くのが感じられた。」

こうして「私」は
「ようやく彼女を見出しながら、永遠に祖母を失ったことを悟った」

愛そのものである祖母という存在が
自分にとってかけがえのないものであるとはじめて分かったとき
同時にその祖母を永遠に失っていることを悟らなければばらない
この残酷ともいえる事実を
プルーストはどのように受けとめるのだろう。

※引用は「失われた時を求めて 第四篇 ソドムとゴモラⅠ」鈴木道彦訳より
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